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ネタは某ラブコメ漫画から。このラブコメ漫画知ってる方いますかねぇ?
知っているという方は同年代かもしれませんね!
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「いらっしゃい」
従兄弟の馬岱がアルバイトをしている町の小さな喫茶店に訪れた馬超。大学のクラブ活動の後でここに寄るのが日課になっている。
店に足を踏み入れれば、馬岱が声をかけてくれる。
馬超の指定席は、カウンターのど真ん中の席。そこは、簡単な厨房で働く馬岱がよく見える場所だ。
人当たりの良い馬岱は、こういった接客の仕事が合っている。
「若、おつかれさま」
カウンター越しに、馬岱がお冷を出してくれる。
「今日はバレンタインデーだねぇ。若、学校でたくさんもらった?若はもてるもんね」
日付も表示されている店の中の時計を見ながら尋ねる馬岱に、馬超は眉間にしわを寄せて紙袋を見せた。
「いらぬと言っているのに寄越すから迷惑だ」
「そんなこと言わないの。勇気を振り絞ったコもいるんだから」
「知るか」
「もう!」
「それに、俺は馬岱からもらえればそれでよいのだ」
勿論用意してあるのだろうな、と馬超が続ける。上目遣いで馬岱を見ている。
「当然でしょ。まぁちゃんとしたのは家に帰ってから渡すけど・・・・・・」
馬岱がカウンター越しに何かを出そうとしたその時、少し離れたテーブル席から馬岱を呼ぶ声が聞こえてきた。
「ごめんね、若」
そう断って、馬岱が馬超以外の客のところに注文を取るために向かった。
お冷を飲みながら、馬岱の仕事っぷりを馬超は横目で見る。ここに寄るたびに見ているのだが、こういった接客業が本当に似合う。自分以外に笑顔を振りまくのは少々気に入らないが。
「えっココアないの?」
「ええ、申し訳ございません」
「そっか。それなら、ロイヤルミルクティーで」
「はい、かしこまりました」
伝票に客の注文を書き、カウンターに戻ってくる馬岱。
「若は何にする?」
「いや、お前に任せる。夕飯はあとでちゃんと摂るとして、取り敢えず軽いものでよい」
「了解」
カウンターに戻った馬岱は、トースターにバターロールを入れた。軽く焼いたパンにサラミやチーズ、レタスを挟んでくれるだろう。
その間に、ロイヤルミルクティーを先程の客に持っていく。
周囲がバターロールの焼ける匂いで包まれる。
「お待たせー」
馬超の予想通り、バターロールは真ん中に包丁が入っていてサラミとレタスが挟まれている。
「それと、これ」
馬超の前に、カップが一つ。
「これ・・・・・・」
そこには、先程馬岱が客に断っていたココアが注がれている。
馬岱が馬超の耳に口を寄せてこっそりと言う。
「本当はココアってメニューはないんだよ、ここ」
ウインクをして、馬岱が厨房に戻っていく。
馬超はメニューを確認する。
そこには、『ホットチョコレート(ココア)』と記されている。
「馬岱め、ささやかなバレンタインってことか。かわいいヤツめ」
帰ったら、思う存分愛してやろう。
馬岱の優しさに心がくすぐったくなる。
早く、馬岱と一緒に家に帰りたい。
そう思いながら、馬超は馬岱の気持ちがこもったホットチョコレートを口にした。
きっと一日の残りの時間は幸せに満ちている。
2012/02/25