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徒然なるままに妄想を吐き出します。
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 ピクシブに先行でupしたOROCHI設定で政兼です。
無印孫呉ストーリー赤壁の戦いの後です。
タイトルはいつも通り恋したくなるお題さまよりお借りしております。



 *****

最期ゆえ言う、儂は貴様のことを・・・・・・!

今際に見た貴様の顔は遠呂智を倒す、戦士であったな。
孫策、兼続のことを頼む。あやつは誰にでも分け隔てなく接しているようで、実は心を開くことが苦手なところがある。意固地になることもある。
ふふっ。意固地なところは儂に似ておるな。
ただ、儂と違うのは、心を開いた相手には素直に接することができ、尽くすことができる。それを享受する幸村や三成が羨ましくて、儂のいた世界と三国志の世界が融合したこの世界でも、孫策、お前が羨ましかった。
儂と兼続は相変わらずいがみ合ったままであったな。兼続が儂に笑顔を向けることなどこちらの世界でも全くなかったが、感情をむき出しにして突っかかるのは、この世界でも儂にだけだった。
儂はそれに優越感を持っていた。兼続の中では儂は特別なのだと、勝手に思っていた。
じゃが、どうしたら儂にも笑いかけてくれるのかと、ふっとした瞬間思うのじゃ。
それは儂が兼続のことを好きだという紛れもない事実。いつも否定していたが、お前にはばれておったようじゃな。
儂と兼続の共通の知人で、最も信頼できるのはお前しかない。
兼続に何かあったときは、頼む。

「馬鹿だなぁ。兼続を支えるのはお前しかいないだろうが」
やけにはっきり聞こえる声。
そこで政宗は覚醒した。
「お、気が付いたか?」
「・・・・・・孫策」
「おう」
状況が飲み込めない。
自分は死んだのではなかったのか?
兼続の剣と護符は確実に自分の急所を捉えていた。
掛け布団の中から両腕を出してみる。動きがぎこちない。寝巻から包帯がのぞく。部屋の空気がひんやりとしている。
ああ、生きている。
「よかったな、兼続が助けてくれたんだぜ」
赤壁での戦い以降の出来事を孫策が話してくれる。
政宗が崇拝した遠呂智は孫呉によって古志城にて倒された。
「そうか、遠呂智が・・・・・・」
「すまねぇな」
「謝る必要などない。遠呂智よりもお前の方が強かった。それだけであろう?」
孫策は強い。父親や妹、親友を人質に取られても尚、遠呂智に立ち向かっていった。立ち向かえる強さを持っていた。そこに織田信長の協力が加わり、魏と蜀も手を差し伸べた。
一度は失った孫呉を取り戻すために前を向く孫策は眩しかった。
兼続もそんな孫策に共感したのだろう。信長の使いで左近に書状を持ってくると必ず孫策に会った。孫策の義を支えるとまで言った。
孫策と話す兼続はとても楽しそうで、政宗は何度羨ましいと思っただろう。
起き上がろうとする政宗を孫策が制する。
「まだ起きるな。歩ける状態じゃない」
「じゃが、いつまでも儂はここにいる訳にはいかない。儂は敵方の将じゃぞ」
「その前にダチじゃねぇか」
にかっと笑う孫策。
ダチ・・・・・・?
政宗は隻眼を見開く。
孫策が枕元に腰掛けて、政宗の額に手を当てる。
「熱は下がったみてぇだけど、まだちょっとあるな。何か食べられるか?食べるんだったら何か持ってくるぜ?」
まだ何かを食べられる気分ではない。
孫策に断ろうとしたその時、部屋の扉を叩く音と聞き覚えのある声がした。
「孫策さん、政宗さんの様子はどうですか?」
この声は左近だ。
今開ける、と孫策が扉を半分開ける。
「うん、今目ぇ覚ましたところ。熱は下がってるけどちょっとある」
「そうですか。それではこちらを渡してあげてください」
左近は孫策に何かを渡した後、この場を去って行った。横になっている政宗からは扉周辺は見えないので、孫策が左近から何を受け取ったのか分からない。
扉が閉まる音がして、孫策が戻ってくる。孫策の足音の他に、もう一つの足音がする。
「じゃあ、あとはよろしくな。何かあったら呼んでくれ」
孫策の口から、兼続、と続いた。
思わず起き上がってしまう政宗。
視界に入る、兼続の姿。眉間にしわを寄せ、神妙な顔つきをしている。
兼続の頭をぽんとひと撫でして孫策が部屋から出て行く。
部屋に、兼続と二人きり。
兼続が先程の孫策と同じように政宗の枕元に腰をかける。政宗の左腕がかすかに兼続の背中に触れる。
こんなにも近い距離なんて、初めてではないだろうか。
何を言っていいのか、分からない。
孫策は兼続が助けてくれたと言っていた。礼を言うべきか言わぬべきか。
兼続が黙ったままなので、政宗も黙ってしまう。
両手で掛け布団をぎゅっと握り、俯く。
兼続は微動だにしない。政宗が俯いたまま、ちらりと盗み見しているくらいは気付いていそうだが。
この沈黙に耐えられなかったのは、政宗のほうだった。兼続の右肩を掴んで、強引に自分の方向に上半身を向けさせた。
比較的長い前髪からのぞくのは、はらはらと涙を流す特徴的な兼続の灰色の目。
「み、見るな!」
兼続が政宗の手を振り払って立ち上がる。
「貴様は何をしに来たのじゃ」
そうでもなければ兼続が政宗に会いに来る筈がない。
「私は、左近に用があって来たのだ!そうしたら・・・・・・」
「無理やり連れてこられたとでも言うのか?嫌ならば断わればよかろう」
孫策だって兼続が断れば無理に政宗に会わせようとはしないだろう。
政宗の声が段々大きくなっていく。
「何か儂に言いたいことでもあるのか?それとも遠呂智が滅び、行き場も理想も失った惨めな儂を笑いにでも来たのか?!」
「ち、違う!」
「違わないであろう。現に貴様は何も言わぬ。心の中で嗤っておるのだろう?!貴様だけじゃない、他の、儂を知る者は皆、儂のことを嗤っておるのであろうが」
「そんなことはない!誰がお前を嗤うものか。自らの信念を貫いたお前を、誰が・・・・・・」
兼続はそこで口をきゅっと閉じて政宗を見た。
そして呟くように言った。
無事で、生きていてくれて、よかったと。
「・・・・・・貴様が儂を助けたのではないのか?」
「私は、お前を見つけただけだ」
兼続の剣と護符で政宗は貫かれたが、辛うじて急所は外れていた。だが、大量の血を流して倒れていた政宗を目の当たりにした兼続は、何もできずにいた。
政宗が死んでしまう、もう会うことも話すこともできなくなる。そう思ったが、兼続はその場に立ちつくしてしまっていた。宝剣も護符も落としていたことに気が付かないほどに。
政宗をこの孫呉に運び、治療の手配をしたのは全て孫策なのだ。兼続は全てを孫策に任せたままだったのだ。
孫策から政宗が一命を取りとめたと聞いて、本当はすぐに駆けつけたかった。だけど、そんな勇気は全くなく、織田信長が明智光秀に孫堅への書類を送るように手配した際に、光秀が躊躇う兼続の背を押してくれたのだ。
「本当に大切だと思うのなら、その者を失ってはいけない。私は貴方に以前の私と同じ思いをしてほしくないのです。後悔だけはしてほしくないのです」
光秀の後悔、それは自ら主君を討ってしまったこと。所謂本能寺の変のあと、後悔ばかりしていた光秀は、遠呂智が創り出したこの世界で再会した主君と行動を共にしている。失ってしまった時間の隙間を埋めるように。
兼続が政宗を失い後悔することなど、光秀には手に取るように分かるのだ。
だから光秀は兼続の背を押したのだ。
兼続の周りには、彼に手を差し伸べるものがたくさんいる。元の世界では、真田幸村、石田三成、上杉家の皆、今の世界では孫策を始めとした孫呉の面々だ。
政宗は、それが羨ましかった。いつだって兼続のことを見ていたのだから。
俯いた兼続の表情は分からない。だが、未だ涙を流しているのは揺れる肩から推測できる。
「心配をかけて、すまなかった」
政宗が静かにそう告げると、兼続がはっとして顔を上げる。
「兼続、近くに来るのじゃ。その顔をよう見せるのじゃ」
兼続が膝立ちになる。ちょうど顔の高さが政宗と同じくらいになる。
両手を伸ばし、兼続の頬を流れる涙を拭う。
「泣くな、兼続。義だの愛だのを叫んでいない貴様は貴様ではない」
自分のために泣いている兼続も愛おしいのだが、政宗はやはり普段のやかましい兼続のほうが好きなのだ。
「儂を倒そうとしたことに対して後ろめたく思うな。あの時の儂も本気で貴様を倒そうと思っておったのだからな」
あの時、兼続を手にかけていたら、後々後悔することなど考えてもいなかった。今となってはこれでよかったのだと思っている。再びこうして会えたのだから。
「儂と貴様は理想が異なる。それはこの世界でも変わらぬことじゃ。それで衝突することなどいつものことではないか。だから、明日からは普段通りに振舞え」
理想が異なろうとも、政宗が兼続のことを好きであることには変わらない。今はここまでしか伝えられないけど。
兼続の両頬を両手で包み、額と額を合わせる。
「分かったな、兼続」
兼続の目を真っ直ぐ見る。特徴的な灰色の瞳が政宗の独眼を捉えている。
少しでも気持ちが伝わるだろうか。
兼続がゆっくりと頷いた。
「うむ。それでよい」
兼続の頬から手を離し、政宗は笑う。
兼続の前で笑うのは初めてかもしれない。少しでも兼続の不安を和らげることができるのなら。
「政宗、ありがとう」
「ふん、貴様が儂に礼を言うなど、明日は雨かもしれんな。それとも槍でも降るのかのう」
「な、何を!」
政宗の両手を振り解き、兼続が立ち上がる。
そう、それでいい。
これが今の自分と兼続の心地よい距離なのだから。
「否定はできぬであろう?」
「やはりお前は不義の山犬だ。たまに人が心配するとこれだ!心配して損したではないか」
不義の山犬、久しぶりにこの言葉を聞いた。
政宗は声を上げて笑う。やはり兼続はこうでなくては。損したと言っているが、本心ではないことくらい今の政宗なら分かる・
「・・・・・・帰るぞ」
「ああ」
「また会おう」
兼続の言葉に政宗は頷く。兼続の表情も晴れやかだ。
次に会うとき、お互いどの立場にあるかは分からない。それでも政宗は兼続と会うことができたら嬉しいと思う。

兼続が帰ったあと、ほどなくして孫策が再び政宗のもとを訪れた。
「お前、兼続に何言ったんだ?随分すっきりした顔してたけど」
「別に」
「ふぅん。ま、俺は政宗の味方であり、兼続の味方だから。忘れんなよ」
孫策が政宗の髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。
孫策の気遣いがありがたくて、もう少しここに留まってもいい、政宗はそんな気がしたのだった。

2011/06/01
2011/06/17加筆修正
 

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