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三成殿が来ると、兼続殿はとても楽しそう。
三成殿は豊臣の、それだけではなく天下の内政を担っている。兼続殿も上杉家の内政を担っている。お二方には共通する話題があるから、話が弾むのだろう。
私には全く分からない分野の話だから、ただ黙ってお二方を見ているしかない。
滅多に笑みを浮かべることのない三成殿が笑っている。兼続殿も笑っている。
三成殿は兼続殿のことをどう思っているのだろう。親友?それとも?
というか、兼続殿は私の恋人のはずなのだが。
「そうだな、お前の意見も尤もだ。やはり相談しに来てよかった」
「ははっ。私でよければいつでも相談に乗るよ」
「ありがたいな」
兼続殿と三成殿が笑う。
それはとてもきれいな笑顔で。
三成殿も私の大切な親友であるし、その双肩に乗っている重責は計り知れない。三成殿が困っていたら私も力になりたいと思う。
だけど、今日は突然訪問して来て長時間兼続殿を占領している。難しい話の内容がたくさんあって、私に入る余地がないのは分かっている。
私だって兼続殿には久しぶりに会ったというのに。
子供染みているというのは分かっている。
「じゃあ、俺はそろそろ戻る」
「うむ。またな」
「ああ、それから、そこの大型犬が耳を垂らして寂しそうにしている。存分に構ってやれよ」
立ち上がった三成殿がにやりと笑って私を指差す。
「大型犬?」
三成殿の指先を辿った兼続殿が私の方を振り向いた。
兼続殿はきょとんとした目をしていたが、三成殿のおっしゃったことを理解したのか、白い頬がほのかに赤くなる。
「じゃあな」
三成殿が部屋から出ていく。
足音が遠ざかり、部屋の中が静かになる。
三成殿に見られていた。恥ずかしい。
「幸村」
名前を呼ばれて私は兼続殿に近付く。
すると、兼続殿は私の髪を撫でて、口元に軽く口付けをした。
「すまなかった。私も本当は早くお前に触れたかったのだよ」
そう言って兼続殿は再び口付けてくる。
そんな恋人がかわいくて、私は触れられなかった時間を埋めるように兼続殿を抱きしめるのだ。
ここからは、恋人の時間。
2011/01/22