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今月末まで作品は展示されているそうなので、すてき政兼を堪能したいと思います!
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土砂降りの雨の中、大きな屋敷の軒下に政宗は手っ取り早く駆け込んだ。通り雨だとは思うが暫くの間降り続くだろう。
自分の屋敷までにはまだ距離がある。これ以上雨に打たれて、折角の治りかけの風邪をこじらせてはいけない。
くしゃん、とくしゃみをひとつ。
まずい。体温も上がってきている。
意識も朦朧としてきた。
「おい、大丈夫か?早く屋敷の中に入れ」
視界に入る、艶やかな黒髪。
意識は、そこで途切れた。
目を覚ましたら、そこは見慣れた部屋ではなかった。
ああ、そうか。雨に打たれて意識を失ったのか。失う瞬間、見覚えのある黒髪が目に入ったような気もするが曖昧だ。だから、ここがどこなのか分からない。
親切な屋敷の家人が自分をこの部屋に入れてくれたのか。しかも濡れた着物も換えてくれている。
首を左右に動かせば、額の上から手拭いが落ちた。ひんやりしていたので、換えてからそんなに時間は経っていないのだろう。
どこまで親切なのだ、この家の者は。
政宗が起き上がろうとすると、低音だがよく通る声が耳に聞こえてきた。
この声は兼続……?夢か現か、どちらだろう。
「気が付いたか?ああ、動くな」
落ちた手拭いを再び額の上に置いてくれる手。
その手は慈愛に満ちていて、政宗の心臓を掴む。
苦しくなって、涙腺が緩んで、不覚にも泣きそうになる。
「大分落ち着いたようだが、もう少し安静にしているといい。片倉殿にはこちらから知らせを出しておいた。安心して眠るといい」
「……すまぬ。迷惑をかけた」
「気にするな」
兼続の声は優しくて、髪を梳いてくれる手が心地よくて、政宗は再び眠りに就いた。
ここがどこだか政宗は理解しているのだろうか。ここは普段から言い争いばかりをしている相手の屋敷なのだ、それなのに、政宗は安心しきったように眠っている。
穏やかな表情で眠る政宗の髪を梳きながら、兼続は思う。
このような顔もできるのだな。
いつもこのような顔をしていれば、敵を作ることなどないというのに。
頬をふわりと撫で、政宗の側を離れようとする。すると、布団の中から政宗の手が伸び、兼続の着物の袖を握った。
袖を引っ張ってみるが、政宗は離そうとしない。眠っているにも拘らず。
側にいろとでも?
仕方がない。今日は忙しくないし、側にいるよ。
愛しい気持ちがわいてくる。
この気持ちに兼続は苦笑しつつ、政宗の手を包みこんだ。
定番の風邪っぴきネタ。政宗→←兼続風味。 2010/06/08政兼祭参加作品
出来上がる少し前の二人です。
続きを書けたらいいなー。