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徒然なるままに妄想を吐き出します。
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政兼祭に投稿したお話の続きその2です。
捏造モブがいますので、ご注意ください。



 *****
馬鹿な!そんなことある訳がない!
「何が、そんなことある訳がないのだ。静かに待てないのか。屋敷中に響いているぞ」
背後から聞こえてきた声に、政宗の心臓は今度こそ停止寸前になった。
「兼続殿」
「兼続」
幸村の嬉しそうな声とは反対に、政宗の声は腹の底からやっとのことで絞りだしたようなものだった。
「来ているというのは、本当のことだったのだな」
兼続が政宗の隣に腰を下ろす。
その動作がごく自然だったので、政宗の頬が朱に染まる。以前ならば、自分の隣に座ることなど、全くなかったのに。というか、何故こちらに座る。幸村の隣ではないのか。
「な、何故、知っておる」
「いや、先程上杉家の御用達が、そなたがこちらに向かっているのを見たと言っていたのでな。まさかとは思っていたのだが。しかし、私が思っていたより時間がかかったようだったので、御用達の見間違えではないかと思っていたところだ」
「迷惑、じゃったか」
顔を上げることができない。発する言葉も途切れ途切れになる。
そんな政宗に、兼続は首を横に振る。
「全然。そんなことはない。来てくれてありがとう、政宗」
恐る恐る政宗が顔を上げると、あの時見た柔和な表情で兼続がこちらを見ていた。
こんな間近で兼続の顔をはっきりと見るのは、初めてだ。
もうダメだ!
そう思った瞬間、政宗は立ち上がる。握りしめた両の拳は小刻みに震えている。
顔が真っ赤なのが自分でもよく分かる。
「帰る!」
帰るったら帰るのじゃ!こんなところにいたら、自分がおかしくなってしまうではないか!
急に立ち上がった政宗の着物の裾を兼続が掴む。
「ならば、外まで送ろう。幸村、すまないがここで待っていてくれないか?」
突然こやつは何を言い出す。一人で帰れるわ、馬鹿め!
そう思っていても言葉にできない政宗は、結局兼続に促されるまま共に屋敷の廊下を歩いた。
その間、政宗も兼続も一言もしゃべらなかった。政宗の場合、しゃべることができなかったというのが正しいのだが、政宗には兼続が一言も言葉を発しなかったことが不思議だった。
一歩前を歩く兼続が前に進むたびに、高く結い上げた長い髪が揺れている。政宗はそれを見ながら兼続についていく。
兼続が何も言わないのが却って政宗の緊張と不安を煽る。
先程の幸村もそうだった。
兼続と幸村、自分との間に隔たりがあるのは、今までの立場の違いから明らかなことなのだが、ここまで如実に感じたことは今までなかった。
それは、大勢が集まる城内や戦場だったからだ。周りに誰かしらいたし、何かあれば片倉景綱を代理にすればよかったからだ。
こうして二人きりになったことなんてなかったのだ。
やはり、迷惑だったのだろうか。
そうこうしているうちに、兼続と政宗は草履をはいて、門の一歩外まで来てしまっていた。
「それでは、こちらに用事があったときは遠慮なく寄ってくれ。またな、政宗」
小首を傾げて、兼続が政宗を見送る。
何か言わなければ。このまま別れていいのか。
否。いい訳がない。
くるりと後ろを向いて屋敷に戻ろうとする兼続を呼び止める。
「か、兼続!」
「ん?どうした?」
「いや、その、何でもない。邪魔をした」
それだけ言って、政宗はその場を駆けだした。
その場に残された兼続は、ただ微笑んでいた。

「何も言わずに帰ってきちゃったのかよ。馬鹿じゃねぇの?」
帰ってきて早々の政宗にそう罵声を浴びせたのは、従兄弟の伊達成実だった。
「うるさい!」
そうなのだ、政宗は礼の一つすら言わずに帰ってきてしまったのだ。
それを知った成実は罵声を上げ、片倉景綱は深いため息をついた。
「殿は直江サンに嫌われてねぇってのがわかったのになー。何でもう一押ししてこねぇんだよ」
どういうことだと言わんばかりに、政宗は首を傾げる。
「真田にも目もくれずに殿のお隣に座ったこと、ずっと殿に笑いかけてくれていたこと、また屋敷に行ってもいいということ。直江殿は殿を嫌っていないということが明らかではないですか。寧ろ大変好意的ではないでしょうか。まぁ、そもそも本当に嫌っていたならば喧嘩なんか致しませんけどね」
口もきかないでしょう?と景綱は続けた。
「そこに気付かないなんて、どーかしてるよ」
成実と景綱は示し合わせたように政宗を責める。
そんな家臣二人に政宗は一言、馬鹿めぇええええと屋敷中に響く声で叫び、二人を部屋から叩き出した。

2010/08/08up

まだ続きます。
よろしければお付き合いくださいませ。

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