徒然なるままに妄想を吐き出します。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
政兼祭に投稿したお話の続きその3です。
捏造モブがいますので、ご注意ください。
捏造モブがいますので、ご注意ください。
*****
一方、政宗と別れた兼続は、屋敷に上がるなり幸村を待たせている客間に、全速力で駆け込んだ。
そして、一気に力尽きたかのように部屋の真ん中にぺたりと崩れた。
「兼続殿、政宗殿は?」
「……帰った、けど。何を言ったか、覚えていない、のだ」
兼続が荒い息で途切れ途切れに幸村に答える。
幸村は兼続の背後に回り、背中をさすって兼続の息が整うのを手伝う。
何て声をかけていいか幸村には分からない。幸村だって、兼続のことが好きなのだ。
好きな人が苦しんでいるから助けたい。だけど、それは自分を苦しめるだけ。報われることのないこの想いをどうしていいか分からない。
いつか、この想いが暴走してしまうのではないか。幸村はそんな恐怖に怯えている。
「幸村、すまなかった」
大分落ち着いてきた兼続は幸村に礼を言って縁側に移動する。
そこで、置き去りにされた包みに気付く。
「これは?」
「政宗殿がお持ちになったものですね」
兼続が丁寧に包みを開く。
高級な桐の箱が現れ、緋色の紐が彩りを添えている。
紐を解き、箱のふたを開ける。
そこには筆と硯と墨と紙、所謂文房四宝が収められていた。どれもが高級なものだ。そして、これらの品は兼続が以前から欲しいと思っていたものでもある。
「このような高価なものを、何故」
「先日のお礼ではないでしょうか。倒れた政宗殿を看病されましたでしょう?」
「私は大したことはしていない。熱を出して苦しんで外で倒れていたら、屋敷に上げて休ませるのは当然のことだろう?政宗からこのような礼をされるようなことは、私はしていないのだ。このような高価なものは受け取れぬ」
このままでは兼続はこれらの品を返すと言いかねない。
それでは政宗が不憫すぎる。
幸村にとって政宗は恋敵だ。故に政宗の気持ちは幸村には手に取るように分かる。兼続の喜ぶ顔を見たいと思うのは、幸村も同じだ。ただ政宗は人一倍不器用なだけなのだ。
「お受け取りくださいませ、兼続殿。お返しするのは不義でございますよ。逆の立場だったら、兼続殿も同じことをしますでしょう?これらを使って文を政宗殿にお出しくださいませ。きっとお喜びになりますよ」
恐らく、これらの品々を贈った政宗の真意はそこにある筈だ。筆まめな兼続が、自分の贈ったものを使って自分宛の文を出してくれたら、どんなに嬉しいか。
幸村は箱を元に戻そうとする兼続の手を掴む。
兼続の表情は不安でいっぱいだ。常日頃から強気な兼続ではあるが、政宗に対してだけは弱気になってしまう。口げんかだって弱気の裏返しなのだ。
抱きしめたい衝動に駆られるが、ぐっと我慢する。
「大丈夫です」
安心させるように幸村は笑う。すると兼続も表情を和らげる。
この笑顔で好きな人が少しでも癒されるのならば、ずっと笑っていよう。
そして今はこうして側にいることを、どうか許してほしい。
兼続は自分を嫌っていない?
確かに、本当に嫌っているのならけんかなどしないし、そもそも口も聞かない。相手にしなければいいのだから。
馬鹿な、そんな都合のいい解釈をしてもいいのだろうか。
毎日兼続のことを考え、政宗は悩んでいた。
「殿、目の下のクマがすごいことになってるんだけど」
成実が政宗の左目の下を指差す。
「どうせ直江サンのことばっかり考えてたんだろ?殿は本当に直江サンのことが好きだよな!さっさと告白すればいいのに」
「こ、告白じゃと!馬鹿め、そんなこと出来る訳がないじゃろう」
それに、受け入れてくれるとは思えない。
いがみ合っていた時間が長すぎる。今更過ぎる。
「それってさぁ、逃げてるだけじゃねぇの?これからずっとそうやって直江サンと接していく訳?直江サンはいつまでも昔のことを引きずってる人じゃねぇよ」
成実の言うことは正しい。兼続は自分を変えることができる。基本的な部分は永遠に変わることはないだろうが。
政宗は成実を羨ましいと思う。分け隔てなく誰とでも会話をすることができる成実は、伊達と上杉が隣接した領土を奪い合っていた頃から兼続とは気さくな付き合いをしている。
「まぁいいや。どちらにしても近所なんだから、これからも何度も会う機会はあるんだし、俺も協力するからさ、直江サンのこと諦めんなよ」
明朗快活に笑って成実は政宗の背中をぽんぽんと軽く叩いた。
「直江サンから文が届くといいな!殿が贈ったのを使ったの」
「な、な、な、何で知っておるのじゃ、馬鹿めぇええええ!」
何でもお見通しの従兄弟が、この頃恐ろしいと思い始めた政宗であった。
兼続から政宗宛の文が届いたのはそれから数日のこと。
受け取ったときの政宗のはしゃぎようは、まるで恋する乙女のようだったと片倉景綱と伊達成実は証言している。
そして、その文を出すまでの兼続もまた、恋する乙女のようだったと上杉景勝と真田幸村は証言している。
二人の距離が縮まるのは、きっともうすぐ、の筈。
愛しいわけをみつけたのなら
2010/08/26
2010/10/11加筆修正up
取り敢えずここで一区切りにします。
少しずつ距離が縮まっていく雰囲気が伝わるといいのですが。
しかし、兼続目線が全くないですねー。私の中でまだ兼続の人物像がはっきりしてないんですよね。
そして、幸村ごめん!どう足掻いても報われないよー!
成実は密かにお気に入り。BSRのときもそうだけど、成実は伊達家の中で政宗に対して対等に物言いができる存在です。
読んでくださって、ありがとうございました!
そして、一気に力尽きたかのように部屋の真ん中にぺたりと崩れた。
「兼続殿、政宗殿は?」
「……帰った、けど。何を言ったか、覚えていない、のだ」
兼続が荒い息で途切れ途切れに幸村に答える。
幸村は兼続の背後に回り、背中をさすって兼続の息が整うのを手伝う。
何て声をかけていいか幸村には分からない。幸村だって、兼続のことが好きなのだ。
好きな人が苦しんでいるから助けたい。だけど、それは自分を苦しめるだけ。報われることのないこの想いをどうしていいか分からない。
いつか、この想いが暴走してしまうのではないか。幸村はそんな恐怖に怯えている。
「幸村、すまなかった」
大分落ち着いてきた兼続は幸村に礼を言って縁側に移動する。
そこで、置き去りにされた包みに気付く。
「これは?」
「政宗殿がお持ちになったものですね」
兼続が丁寧に包みを開く。
高級な桐の箱が現れ、緋色の紐が彩りを添えている。
紐を解き、箱のふたを開ける。
そこには筆と硯と墨と紙、所謂文房四宝が収められていた。どれもが高級なものだ。そして、これらの品は兼続が以前から欲しいと思っていたものでもある。
「このような高価なものを、何故」
「先日のお礼ではないでしょうか。倒れた政宗殿を看病されましたでしょう?」
「私は大したことはしていない。熱を出して苦しんで外で倒れていたら、屋敷に上げて休ませるのは当然のことだろう?政宗からこのような礼をされるようなことは、私はしていないのだ。このような高価なものは受け取れぬ」
このままでは兼続はこれらの品を返すと言いかねない。
それでは政宗が不憫すぎる。
幸村にとって政宗は恋敵だ。故に政宗の気持ちは幸村には手に取るように分かる。兼続の喜ぶ顔を見たいと思うのは、幸村も同じだ。ただ政宗は人一倍不器用なだけなのだ。
「お受け取りくださいませ、兼続殿。お返しするのは不義でございますよ。逆の立場だったら、兼続殿も同じことをしますでしょう?これらを使って文を政宗殿にお出しくださいませ。きっとお喜びになりますよ」
恐らく、これらの品々を贈った政宗の真意はそこにある筈だ。筆まめな兼続が、自分の贈ったものを使って自分宛の文を出してくれたら、どんなに嬉しいか。
幸村は箱を元に戻そうとする兼続の手を掴む。
兼続の表情は不安でいっぱいだ。常日頃から強気な兼続ではあるが、政宗に対してだけは弱気になってしまう。口げんかだって弱気の裏返しなのだ。
抱きしめたい衝動に駆られるが、ぐっと我慢する。
「大丈夫です」
安心させるように幸村は笑う。すると兼続も表情を和らげる。
この笑顔で好きな人が少しでも癒されるのならば、ずっと笑っていよう。
そして今はこうして側にいることを、どうか許してほしい。
兼続は自分を嫌っていない?
確かに、本当に嫌っているのならけんかなどしないし、そもそも口も聞かない。相手にしなければいいのだから。
馬鹿な、そんな都合のいい解釈をしてもいいのだろうか。
毎日兼続のことを考え、政宗は悩んでいた。
「殿、目の下のクマがすごいことになってるんだけど」
成実が政宗の左目の下を指差す。
「どうせ直江サンのことばっかり考えてたんだろ?殿は本当に直江サンのことが好きだよな!さっさと告白すればいいのに」
「こ、告白じゃと!馬鹿め、そんなこと出来る訳がないじゃろう」
それに、受け入れてくれるとは思えない。
いがみ合っていた時間が長すぎる。今更過ぎる。
「それってさぁ、逃げてるだけじゃねぇの?これからずっとそうやって直江サンと接していく訳?直江サンはいつまでも昔のことを引きずってる人じゃねぇよ」
成実の言うことは正しい。兼続は自分を変えることができる。基本的な部分は永遠に変わることはないだろうが。
政宗は成実を羨ましいと思う。分け隔てなく誰とでも会話をすることができる成実は、伊達と上杉が隣接した領土を奪い合っていた頃から兼続とは気さくな付き合いをしている。
「まぁいいや。どちらにしても近所なんだから、これからも何度も会う機会はあるんだし、俺も協力するからさ、直江サンのこと諦めんなよ」
明朗快活に笑って成実は政宗の背中をぽんぽんと軽く叩いた。
「直江サンから文が届くといいな!殿が贈ったのを使ったの」
「な、な、な、何で知っておるのじゃ、馬鹿めぇええええ!」
何でもお見通しの従兄弟が、この頃恐ろしいと思い始めた政宗であった。
兼続から政宗宛の文が届いたのはそれから数日のこと。
受け取ったときの政宗のはしゃぎようは、まるで恋する乙女のようだったと片倉景綱と伊達成実は証言している。
そして、その文を出すまでの兼続もまた、恋する乙女のようだったと上杉景勝と真田幸村は証言している。
二人の距離が縮まるのは、きっともうすぐ、の筈。
愛しいわけをみつけたのなら
2010/08/26
2010/10/11加筆修正up
取り敢えずここで一区切りにします。
少しずつ距離が縮まっていく雰囲気が伝わるといいのですが。
しかし、兼続目線が全くないですねー。私の中でまだ兼続の人物像がはっきりしてないんですよね。
そして、幸村ごめん!どう足掻いても報われないよー!
成実は密かにお気に入り。BSRのときもそうだけど、成実は伊達家の中で政宗に対して対等に物言いができる存在です。
読んでくださって、ありがとうございました!
PR
この記事にコメントする