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大した内容ではありませんが、R18です。
18歳未満の方の閲覧は禁止です。すみません。
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今夜、湯浴みの後私の部屋に来てくれないか?
夕餉が終わり、立ち上がろうとした幸村の着物の裾を掴み、兼続はそう言った。
幸村を見上げた兼続の表情は恥じらいを秘めた朱に染まっている。兼続の言葉の意味を理解し、更にその表情につられて、幸村の顔も真っ赤になってしまった。
直江兼続と真田幸村は、思いが通じあったとはいえ、未だ口付けを交わすだけで契を結んだことはない。
勿論、今までそんな欲求がなかった訳ではない。大切にしたいのに、一度箍を外してしまったら、きっと兼続に無理をさせてしまうのではないか、傷つけてしまうのではないか。それが怖くて、幸村は兼続を褥に誘えなかったのだ。
「い、いや、何か用事があるのなら、別にいいのだ。無理を言ってすまない」
中々返事をしない幸村に、兼続は裾を離して俯いてしまった。
幸村は慌てて兼続の横に座り、彼をぎゅっと胸に抱き込んだ。
「必ず行きます」
だから、待っていてください。そう耳元で囁けば、こくんと頷く兼続。
額に口付けて、兼続を離す。
「それじゃ」
そう言って、幸村は部屋を出た。襖を後ろ手に閉めて、大きく息を吐く。
兼続の前では落ち着いていた幸村の心臓も、今になって、鼓動が速くなっている。
今、兼続はどのような気持ちなのだろう。
耳まで真っ赤になっていたから、きっと同じ気持ちなんじゃないかと思う。
だったら嬉しいし、緊張する。
湯浴みを終え、汗が引いてから幸村は兼続の部屋に向かう。
湯につかっている間、嬉しさよりも緊張の度合いの方が高まってきて、幸村の歩みはゆっくりになってしまう。途中で立ち止まって深呼吸もしてしまう。
兼続の部屋の前に着いた幸村は大きく息を吐いて、襖に手をかける。そして、声をかけようとおもうのだが、上手い具合に声が出ない。
「幸村、いるのだろう?入っておいで」
幸村が声を発する前に、襖の向こうから兼続が先に声をかける。
「し、失礼します」
襖を開ければ、文机に向かって書き物をしていた兼続が筆を置いて幸村の方を振り向く。兼続は幸村より先に湯浴みを終え、この部屋で待っていた。
この距離では、今の兼続の表情はよく分からない。
幸村が立ちつくしていると、兼続が側に近付いてきて、幸村の腰に両腕を回す。
「幸村・・・・・・」
名前を口にして、兼続は顔を幸村の肩口に埋める。
「幸村は、私のことが嫌いになったのか?」
聞こえないくらいの小さな声で、兼続が言う。
何でそんなことになっているのか?好きでもなければ、抱きしめて口付けなどしない。
小さい声だが、兼続は興奮状態で続ける。
「だって、少しも求めてきてはくれないではないか。好き合っているのに、求められないことがどんなに寂しいことか分かるか?」
微かに鼻をすする音がする。もしかして、泣いているのだろうか?
幸村は兼続の両頬を両手で包み、無理矢理顔を上げさせた。予想通り、特徴的な灰色の瞳に涙を溜めていた。
幸村は兼続の額、目じり、頬、そして唇に口付けを落とす。
一度触れるだけの口付けをし、兼続の唇を少しだけ強引に開く。そして、もう一度唇を重ねる。開かれた唇の間から、舌を差し入れる。歯列をなぞり、奥に潜む兼続の舌を絡め取る。
このような深い口付けは、初めてだ。何度も角度を変えて、深い口付けをする。
始めは驚いて体を強張らせていた兼続が、おずおずと幸村の舌に自ら絡めてくる。両手を幸村の首に巻きつけて、密着してくる。幸村も両腕を兼続の頭と腰に回し、離れないように抱き締める。
「んっ」
瞳を閉じて、夢中になって口付けをする。
ふっくらとした兼続の唇はとても気持ちがよくて、口付けだけで時間を忘れてしまう。
いつまでも口付けていたいが、息が苦しくなってきたのか、兼続が両腕を首から離して幸村の胸元を力の抜けた拳で叩いた。
幸村が兼続の唇をぺろりと舐めて顔を離して兼続の表情を窺う。兼続は顔だけでなく耳まで真っ赤にして、とろりとした目で幸村を見ていた。
「ごめんなさい、兼続殿。兼続殿がこのように悩んでいるとは知らずに・・・・・・」
兼続の顔全体に唇を落として、幸村は更に抱き締めた。
そして、幸村は思っていたことを全て伝える。
「馬鹿だな」
泣き笑いの表情で、兼続は幸村の髪を撫でる。そして、兼続から幸村に口付ける。
「もっとほしがってくれ、幸村」
幸村は兼続を抱き上げ、布団に移動する。
ゆっくりとその上に下ろし、幸村は兼続に覆い被さった。
「好きです、兼続殿」
「私も好きだよ、幸村」
お互いの名前を呼んで、口付ける。
啄ばむような口付けから、徐々に深い口付けへ。
「んっ・・・・・・、うんっ」
口付けの合間に漏れる甘い声が幸村を煽る。
着物の合わせから幸村は手を差し込んで、兼続の上半身を露わにする。何度か目にしたことのある兼続の素肌だが、こんな間近で見るのは初めてだ。予想以上に艶やかで瑞々しい。思わず魅入ってしまう。
「そ、そんなに見ないでくれ」
恥ずかしがる兼続が本当に可愛いと幸村は思う。
「ゆ、幸村も、その、脱いで、くれ」
私だけなのは恥ずかしい、と着物の襟を掴む兼続の髪を撫で、幸村は帯を解いて着物を脱ぎ落とす。湯浴みの余韻と愛しい人の裸体で上気している。
幸村には見るなといった兼続だったが、幸村の体をじっと見つめている。
「か、兼続殿。その、私もそんなに見られると、恥ずかしいのですが」
「い、いや、その、すまない。立派になったなぁって思って」
いつの間にか背も私を追い越してしまったし、と幸村の小さい頃を思い出しているのだろうか、兼続がくすくすと笑う。
「もう、いつまでも子供扱いしないで下さいよ」
「すまない」
兼続が腕を伸ばして、拗ねる幸村の両頬を包む。
「おいで、幸村」
兼続がにっこりと笑う。それを合図に幸村は兼続の首筋に顔を埋めた。
ちゅっと音を鳴らして、幸村が兼続の首筋に吸いつく。優しく、熱く。
この愛しい人は、自分のものだと主張したい。
少しだけ強く吸いついて、紅いしるしを残す。白い肌に紅いしるしが映える。
徐々に色めいていく兼続がとても美しくて。いや、美しいなんて簡単な言葉で片付けられない。
「兼続殿・・・・・・」
名前を呼べば、笑顔で応えてくれる。髪を撫でて先を強請ってくる。
そんなさり気ない仕草に、幸村の心はきゅっと締めつけられてしまうのだ。
お互い同性と体を重ねるのは初めてなのに、二人の体はお互いのためにあるかのようだった。幸村が求めれば、兼続もそれに応えて艶やかに変わっていく。
「・・・・・・はぁっ」
幸村を受け入れた兼続の瞳には涙が溜まっている。慣らしたからといっても、元来は男の欲を受け入れる場所ではない。幸村の想像以上に、兼続は苦しんでいるのではないだろうか。
「す、すみませんっ」
それに気が付いた幸村が動きを止める。
「や、止める、な」
「だ、だけどっ」
「言っただろう?私の前で、『いい子』ぶるのは止めてくれ、と。もっとほしがってくれって」
兼続が幸村を抱き寄せる。両脚を幸村の腰に巻きつけて密着する。
「うぁ・・・・・・っ」
「ああ、好きです、兼続殿。誰よりも、好きです」
幸村が動けば、兼続も幸村にしがみついてそれに応える。
全身全霊で愛す。
この体と心はもう全てお互いのもの。
誰にも壊すことはできない。
「あ、幸村ぁ。もう・・・・・・!」
「兼続殿っ」
お互いの名前を呼び合い、同時に果てる。
何て幸せな瞬間なのだろう。
障子の隙間からこぼれ落ちる朝の光で幸村は目を覚ました。
胸の中には愛しい人がいる。兼続が身じろぎする度に漆黒の髪が胸元をくすぐる。
こんなにも可愛らしい人を幸村は知らない。
一線を越えたことで、昨日よりも想える。
兼続の髪に口付けて撫でる。
「う、ん」
「おはようございます、兼続殿。お体は、大丈夫ですか?」
いくら兼続が求めたからと言って、無理をさせすぎたと幸村は思う。
「あ、幸村・・・・・・。うん、大丈夫だ」
痛くてもよいのだ、幸村と一つになれた証拠なのだから。
「兼続殿!」
そう笑う兼続をこの胸に抱き締めて、幸村も笑顔になるのだった。
2010/12/12up
幸兼R18話でした。
R18にしては物足りないかもしれませんが、現在の私にはコレが限界です。
精進します。